クリスのディオールが、どうしてもエディのディオールに敵わないといわれてしまう、4つの理由 – Vol.4

こんにちは。コラムを担当させております、デザイナーの木田と申します。

今回は、連載「クリスのディオールが、どうしてもエディのディオールに敵わないといわれてしまう、4つの理由 」の第4回目になります。

 

ロックとクラシックにまつわる誤解

二人のデザイナーの方向性の違いは、あからさまな表現方法の違いとなって表れました。

それはよく言われるように、エディがロックの熱烈なファンであり、クリスがクラシック音楽好きと言われていることとおそらく関係しています。

つまり、斬新なロック・テイストのエディ、エレガントでクラシカルなクリスという対比が、両者のデザインについての誤った評価を促しているのではないかというのが四つ目の理由です。

確かにロック・テイストをあそこまで徹底的にファッションに取り入れたエディのコレクションはきわめてユニークなものでした。さらにそれだけで終わらず、エディのディオールの素晴らしい点は、ロックを服飾という形で、しかも高い完成度で表現することに成功した点です。

それまで耳で聴くことしかできなかった、とらえどころのない「サウンド」を身にまとえる形で体現してみせたと言い換えてもいいかもしれません。そこにはきわめて直感的なわかりやすさがあり、ロックに傾倒したあらゆる世代の心をつかみました。

ですが考えてみれば、ロック・テイストを取り入れるという手法は、過去をさかのぼる作業です。どちらかというと懐古的、ノスタルジックな精神に根ざしていて、新しいものを生み出すというよりはむしろ保守的な試みと言えます。

実際、エディが提案した細身のスーツスタイルなどは、彼がデザイン着想の源としているポール・ウェラーに代表されるモッズ・スタイルをそのまま取り入れていると言えなくもありません。

一方のクラシック音楽というのは、一般的に古くさいイメージがありますが、実際はその逆。クラシック音楽の歴史とは、伝統やしがらみとの戦いの歴史でもあります。

現代音楽はもちろん、ドビュッシーなどの近代音楽なども当時は前衛的なものとして受け止められていましたし、クラシックの始祖と言われるバッハでさえ、保守的な人たちからは悪趣味な音楽とみなされていました。

クリスが志向するのは、そうしたクラシック音楽の流儀です。

良質なリネン生地の耳をそのまま使ったり、芯地を外に見せるといった、「型破り」を確信犯的に、冷静な態度でやってのける前衛的な手法はまさにクラシック音楽の技法そのもので、一見したところ退屈に見えるようなデザインでも、目を凝らしてみると、形式美にのっとった、きわめて新しく奇妙な表現であることに気づかされます。

その意味ではクリスのディオールは少しもエレガントではなく、クラシカル(古典的)でもありません。むしろロック・テイストをハイ・ファッションにまで高めたエディのほうがよほどエレガントに見えるほどです。

音楽スタイルにまつわる誤解がなければ、もしかしたらクリスのデザインの評価はもう少し違ったものになっていたかもしれません。

 

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